
前立腺がんとは?
前立腺がんは、欧米では男性がん死亡例の約20%(肺がんに次いで第2位)を占める頻度の高いがんですが、日本では約4・8%(2004年神奈川県)と比較的頻度の少ないがんです。
日本人男性が1年間に前立腺がんと診断される人数は、人口10万人あたり28・6人(年齢調整罹患率、2004年神奈川県)で、胃がん、肺がん、結腸がんに次いで4番目、男性がん全体の12%を占めています。
年齢別では、45歳以下ではまれですが、50歳以後その頻度は増え、70代では10万人あたり約200人、80歳以上では300人以上になります。このように、前立腺がんは高齢者のがんであるといえます。
今後日本では、食事の欧米化、高齢人口の増加、腫瘍(しゅよう)マーカーであるPSA(前立腺特異抗原(ぜんりつせんとくいこうげん))検査の普及に伴い、前立腺がんの患者は急速に増加し、近い将来、胃がんを抜いて肺がん、大腸がんに次ぐ3番目に多いがんになると予想されています。
原因は何か
前立腺がんの原因は遺伝子の異常と考えられており、加齢と男性ホルモンの存在が影響しますが、いまだ明確ではありません。そのため、効果的な予防法も明らかではありません。
欧米での報告によると、肉やミルクなど脂肪分が多く含まれている食事を多く摂取することにより、前立腺がんの発生が増えると考えられています。一方、穀類や豆類など繊維を多く含む食事はがんの発生を抑える効果があると考えられています。ハワイや米国東海岸在住の日系人は日本人と米国人の中間の発生率であり、食事の欧米化が原因とする考えの根拠のひとつになっています。喫煙との関係を指摘する報告もあります。
前立腺がんは、遺伝の要素が強いがんのひとつと考えられているため、前立腺がんと診断された親族がいる場合、早め(40歳〜)にPSA検査を受けることをすすめます。
症状の現れ方
前立腺がんは前立腺の外腺の腺上皮から発生する率が高く、初期にはほとんど症状がありません。がんが大きくなって尿道が圧迫されると、尿が出にくい、尿の回数が多い、排尿後に尿が残った感じがする、夜間の尿の回数が多いなど、前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)と同じ症状が現れます。
がんが尿道または膀胱に広がると、排尿の時の痛み、尿もれや肉眼でわかる血尿が認められ、さらに大きくなると尿が出なくなります(尿閉)。精嚢腺(せいのうせん)に広がると、精液が赤くなることがあります。さらにがんが進行すると、リンパ節や骨(脊椎(せきつい)や骨盤骨)に転移します。リンパ節に転移すると下肢のむくみ、骨に転移すると痛みや下半身麻痺(まひ)を起こすことがあります。
前立腺肥大症との区別
早い段階では、前立腺肥大症と前立腺がんに症状の差はありません。どちらも、血尿や尿が出にくくなるなどの症状が現れます。前立腺肥大症ではどんなに進んでも、骨の痛み、下肢のむくみなどはみられません。直腸診では、前立腺肥大症は、弾力性のある腫大(はれて大きくなる)した表面が平滑な腫瘤(しゅりゅう)として触れますが、がんでは、硬いしこりを触れます。PSA値は、前立腺がんのほうが高値を示します。最終的には、前立腺の針生検を行って診断します。
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